第13回 ペン習字の練習は"楷書のひらがな"から始まった。なぜなら今月の添削課題がひらがな12文字だからだ。4月始まりに間にあってよかった。

 添削課題は"いろは順"だが、現代人のおれは"あいうえお順"で練習する。
 一日5文字ずつ。ずいぶんのんびりしたペースだが、欲張ってすぐに息を切らすよりはましだろう。
 最初は「あいうえお」。C系統のお手本を見ながら、枡目に4分割の点線(リーダー罫というらしい)の入ったノートに一文字ずつ書いてみる。いきなりここでけつまづいた。
 「え」の字がおれの知ってる「え」じゃないのだ。

 系統別のお手本を見比べると、長いことおれが慣れ親しんできた「え」を使っているのはD系統だけだった。他の3つの系統の「え」は、不思議な形をしている。


 まるでケンシロウの胸の傷のようだ。ミジンコピンピン現象で見る形にも似ている。








 この「え」はなんだ。学校で習ってませーん、今後はこの奇妙な「え」を書きつづけなくちゃいけないんですかーと不満を漏らしながらテキストを読む。ちゃんと根拠が書いてありました。文句言って損した。


 「ひらがなは漢字が変化したもの」という見出しの下に、(もとの漢字を知っていると、ひらがなの形を知るうえでたいへん役立ちます)と書いてある。
 なんと、「え」の正体は「衣」であった。なるほど、モーフィングか。奇妙に感じたこの形には、由緒正しい出自があったのだ。








 パイロットのテキストからの引用ではないが、一覧表も載せておこう。
 これによると、おれの名前は"太波良世以之"となる。珍走団が好んで書きそうな字面だ。でもこれで書くと「世露死苦」ではなく「与呂之久」なって、どことなく鶯が鳴いてる感じになる。








 カタカナもひらがなと同じように漢字が元になっていて、共通の母体を持つものもあるし、異なるものもあるようだ。
 この点については、こちらのサイトが教えてくれる。
 ⇒日本辞典


 すこし調べてみると、ひらがなの原型は漢字の草書だそうだ。
 草書から生まれたひらがななのに、おれが第一歩として練習しているひらがなは楷書である。小声で「大きな声」とつぶやいているようでもあり、木のまわりをぐるぐる回っているようでもあっておもしろい。


 あんまり回るとバターになっちゃうけどな。