第8回 ペン習字を学ぶと決めた。しかし、具体的にどうすればよいのかがわからないので、とりあえずネットで検索する。いきなり解答を与えてくれるサイトに出会うことができた。


たいていの疑問を解決してくれるよな、インターネットは。コンピューターへの依存度を高めるだけ高めといてから電力を取り上げて無力化する作戦だだろう、メフィラス星人よ。



 おれの疑問を瞬時に解決してくれたのがここ。
 『ペン字いんすとーる』 サブタイトルが「通信教育で悪筆は直るのか。」utaさんのサイトだ。
 2時間ほどかけて読ませてもらった結果、ペン習字について自分がなにも知らないことが自覚できたし、誤解も多かったと知った。utaさんのサイトのタイトルがすべてを語っているように思えるが、おれがわかった(と思った)のはこんなことだ。
・通信教育は有効である
・ペン習字を学ぶことで書く字がすべてうまくなるのではないようだ。きれいに書くことをこころがけたときにきれいに書けるようになるらしい
・手本なしでもきれいな字を書けるようになるのは容易ではない
・きれいな字が書けるようになると、自分の字の欠点がどんどん見えてくるらしい
・けっこうまじめに練習する必要があるらしい
・通信教育は1年で1サイクルだが、何年も学び続ける人が多いようだ
・ペン習字と書道は別物のようだ
・硬筆書写検定というものがあるらしい




 結論:ペン習字を学ぼう。自分が始めるまえから他人に薦めてみてもいいかもしれない




 思い出そうとしても、おれはペン習字の経験を持つ人をまったく知らない。きれいな字を書く人は何人か出会ったが、それは生まれつきの才能だと思っていたので「字の巧拙は素質で決まる。後天的に学習しても無駄だ」と思い込んでいた。



 自分の書く字についても「丁寧に書けば他人にも読めるレベルにはなるから、それでいいじゃん」程度に考えていた。フォントのような整った字が書けたとしてもあまり嬉しくないしな。フォントが好きならパソコンを使えばいいし。
 それに、何十年もかけて築き上げた愛着のある自分の癖字がなくなるのは寂しいし、とも。ところが、癖字は消えないらしいのだ。美しい字を書けるようになった人でも、書こうと思えばいつでも癖字を書けるらしい。
 


 美男美女がひどい字を書くのを見ても、おれは落胆よりも親しみを感じる。勉強や仕事ができる人の字がかならずしも美しいとはかぎらないし、むしろ逆のパターンが多いことも知っている。ベートーベンだってモーツァルトだって、楽譜は汚かったらしいじゃないか。だから自分は字で人を判断しないし、自分を字で判断してほしくもないと考えてきた。



 その反面、整った字で書かれた履歴書を見ると、自動的に「この人はきちんとした人にちがいない」と感じていたのも事実だ。だらしがなさそうに見える人が思いのほかきれいな字を書くのを見ると、人格込みで見直したりもしていた。したり顔で「筆跡と人格を結びつけて考えるのは日本人だけらしいよ」なんて言いながら、この点ではまさに自分が日本人だったのだ。
 どうやら、おれの悪筆擁護は自己防衛のための働いた瞞着であり、本心では自分の手にコンプレックスがあって、きれいな字にあこがれていたようだ。
 よし、ここはひとつ鎧を脱いで、ペン習字を学んでみようじゃないか。



 具体的にはどうしよう。おれの性格から、完全な独学は無理だ。ペースメーカーが必要だし、できれば数字による評価がほしい。かといってどこかに通うことも苦手だから、通信教育にしよう。
 こう考えた結果、毎月の添削指導があって受講料も安いパイロットに決めた。手本となる系統を4種類のなかから選べる点もパイロットに決めた理由のひとつだ。「選択肢を与えるとどれかを選んでしまう」という心理にまんまとつけこまれた気もするけど。



 こうなると申し込まない理由はないので、パイロットに12600円を送金した。ネットの情報によると教材が届くまでにはけっこうな日数がかかるらしいので、そのあいだにペン習字ブログでも始めて退路を断っておこう。ほぼそれだけの理由で生まれたのがこの場所である。



 ペン字いんすとーるで「六度法の本選びで迷ったら」というタイトルで紹介されている本を買って、付属のCDを見て、読んだ。うん、シンプルで明確ないい本だ。すぐに練習したくなったが、パイロットに操を立ててペンは握らずにいた。




『簡単ルールで一生キレイな字』 富澤俊彦著
DVD・ノートつき 1400円








 練習用の紙はどうしようか。ノーブルノートの書き心地は最高だけど、練習に使うのは贅沢な気がする。万年筆の修理代を筆頭に、ずいぶんお金を使ってしまったからこれからは節約だな。100円ショップ中心でいくか。紙の質には目をつぶろう。と言っても、いまの100円ショップに粗悪品はほとんどないだろう。
 近所のダイソーに行ってみると、子供用の国語のノートだけでもけっこうなバリエーションが揃っていた。選んだのはこの2つ。




ダイソー がくしゅうちょう リーダー罫入りかんじれんしゅう 50字詰め(ルビ欄・4分割の破線入り)100円












ダイソー 学習帳 漢字練習 150字詰め(ルビ欄つき)100円












 ついでに添削課題を整理するためのクリアファイルも用意しておこう。もちろん100円で。



 よし、これで準備万端。